夕方みたいだった。朝で夜。
急いで支度をして家を出る。今日は11時からレッスンだったので学校で練習するためと、後はきのう絵を描いて遊んだのでちょっとした罪悪感から、今日は早く起きた(もっと早く起きる予定だったが)。
今朝の練習室はけっこう混んでいたけれど、何とか部屋を見つけてウォーミングアップができた。
注:アカデミーではありません。
11時にスタインウェイ・ホールに着く。
何だかものすごく手ごたえのあるレッスンを受けることができた。たまには「なあなあ」のレッスンや、本当にダメダメのレッスンもある。でも、今日は何だか耳も頭も指も冴えていた感じ。リストの伝説1番。ものすごくゆっくり弾いても音楽はできる、フレーズとテンポも関係ない、そんなことがきちんと頭に入ったレッスンだった。もう少し素直になりたい。またこんなレッスンが受けられるように、ちゃんと頑張ろうと思う。
12時に終わり、家に帰って昼食を軽く取る。頭が痛いけどきっと気のせいだと思い、昼寝をしたら少しマシになった。
しばらくずっと買出しに行っていなかったので、久しぶりに家の近くの大型スーパー、セインズベリー(sainsbury's)へ行く。
隠し撮りしてみた(いいのかな)。
とにかく大きいスーパーでレジは30番以上まであり、品物も、何でも揃っている。ないものを見つけるのが大変なくらい。さすがに日本系の食材は難しいけれど、白菜や醤油、豆腐、タイ米などはある。この前は、フラットメイトが春雨らしきものを”ベトナム食材コーナー”で発見してきた。
大型店らしく、スケールの大きい品物も多い。1キロ単位で売っているじゃがいもの袋や冷凍食品、2ℓ×3本パックのペットボトル、24袋入りのポテトチップス、1日で2キロくらい太れそうなケーキ、絶対持てなそうなジャンボ洗剤、などなど。誰が買うんだと思うけれど、けっこうたくさんの人が買っている。いつ食べ終わるんだろう…。
”Buy 1 Get 1 Free”(一つ買ったら一つただ)や”2 for £2”(2つで2ポンド)、”3 for 2”(3つで2つの値段)などをよくやっているこのセインズベリー。食材に限らず、キッチン用品やバス・セット、ペーパー類もよくやるので、大助かりである。
家に帰ったら、頭痛がひどくなった。なので、寝ることにする。でも今この文章が書けている(パソコンの画面を見ていられる、部屋の電気をつけていられる、次の言葉を考えられる・笑)ので、実はそんなにヘビーではないと思う。でも、最近そう言えばなかったなあ。
ひとつ、「なあなあ」の語源が気になったので調べたら、由来は歌舞伎の掛け合い、らしい。何だ、本当に「なあ」という呼びかけからだったのか。ちょっとがっかり(笑)
洗濯と部屋の掃除を少しだけして、午前中は練習。
1時に家を出て学校へ寄って、少しピアノをさわってから、スタインウェイ・ショップへ。
晴れていて、本当に気持ちがいい。
いつも、このショップの地下にある2つの練習室のうち、手前の部屋でレッスンを受けている。
まだ少し時間があったので、奥の部屋から聴こえてくる練習に耳を傾けていたら、何だか、とても上手だった。キレがとても良い(すべての音が1音1音しっかり鳴っている)し、(パスカル先生推奨の)ノンペダル練習、フレーズもとてもきれいだった。たぶんラヴェルだと思うけど、最後まで一度もペダルを使わずにイン・テンポで弾いていた。どんな人かなー、と思って試しに覗いてみることにした。
窓を覗く。豊かでとても綺麗な白髪が見える。でも、(私の)背が低いので、顔は拝見できず。
ちょっと背伸びしてみた。
あ、…・……………アシュケナージだ………………。
だいぶ驚いた。”とても上手”なんかで片付けられない人だった。
100%防音ではないので、レッスンを受けている間も、ずっと聴こえてきてなかなか集中できなかった。でも、滅多にない機会だし、こんな練習を聴かせてもらえるなら、とちょっと自分に甘くなることにした。
今日はショパンエチュードのOp.10-4と、リストの”伝説”1番。エチュードは良かったけれど、伝説はこってりしぼられた。課題が浮き彫りになった。
レッスン終了後は、台湾人の元フラットメイトに頼まれていた用事を終わらせる。その後、友達と待ち合わせをして、夕食を取った。”みさと”という、チャイナ・タウンの近くにある日本食(言い切れないけれど)レストラン。安くて量が多い、というのが売りの一つであるこのお店。おいしかったけれど、食べ切れなかった。
疲れて帰宅。
ロンドンでフルタイムで働くためには、就労ビザが必要である。就労ビザを取得するには、”ワーク・パーミッション”という雇い主からの労働許可証のようなものが必要である。(余談だが、「ワーク・パーミッションがないとビザが取れない」「ビザがないとワーク・パーミッションがもらえない」という矛盾も発生するらしい。伝聞なので確かではないけれど。)
なので、外国人は、英国人同様、常識を知っていなければならない。英国の歴史や法律、経済など分野はさまざまだが、とにかく審査の一環として、常識問題が出るらしい。
友達から聞いた、交通に関する1つの例。
「原動機付き自転車、自動二輪車等はヘルメット着用が義務付けられているが、例外がある。それはどのような人物か?」
というもの。英国(特にロンドン)という人種の坩堝、ならではの問題。
正解は、「宗教上の理由で、頭にターバンを巻いている人」。
日本ではこうはいかない気がする。
朝はこんな感じ。暗い。暗いなぁ。
バスに乗っていて、いろいろなものが目につく。地上から、ものすごく長い、重たいはずのモップを持って4階の窓を掃除している人、颯爽とハンドル付きのスケートボードをこいでいる中年のおじさん、フードをかぶっている上に前髪が長いので、明らかに前が見えていない(のに走っている)小さい子。微笑ましかった。
8時半に出て、9時に学校に着く。9時半からリハ、10時からヴァイオリニストのレッスンだった。
前にチャイコフスキーのトリオでレッスンを受けたことがあった先生で、音楽性も人間性もとても豊かな人だと思う。シベリウスは、突然、冒頭のあの雰囲気を作るのはものすごく集中力がいると思う。問題はテンポや音程ではなく、いかにその雰囲気を作り出すかで、自然と成り立つ、と先生がおっしゃっていた。あとは「チームワーク」。3対4のところや最後の速い部分などは、合わせるというより、2人で流れを作りだせば、大丈夫。
モーツァルトの5番は、先生の言葉で前と後でガラリと変わって、やはりすごい、と思った。
先生はいろいろな言葉でこの5番1楽章を説明した。「ハピネス」「ジョイフル」「フルーティ」「ノット トゥ アポロジャイズ(弱々しい音じゃなく)」、私のイメージの中では、「ジョイフル」が一番しっくりきている。途中でC#マイナになるところがあって、ンタッターラターラッタッタッ、と伴奏をしている途中でいきなり解った。そうか、このマイナ部分は…。
「だって、涙が出ちゃう。女の子だもん」。
これだ、と思った。別に涙が出るとか、女の子だから、というわけではなくて、この台詞、何だかあまり悲しそうに聞こえない。ひょっこりひょうたん島の歌詞や、ちびまる子ちゃんのエンディングの歌詞でもよい。このモーツァルトのマイナ部分も、マイナではあるけれど、悲しい感じとは無縁な気がする。直前はEメジャで、「つらいことだってあるさ」くらいにふわっと持ち上がる感じにマイナを脱却すればいいのでは、と思った。うまく言えない。とにかく、この部分はしっかり掴んだ。(アニメの台詞で掴んでいいのか)。でも、ヴァイオリニストに話したら賛成してくれた。良かった。
学校に着く前に降っていた雨は、すでにやんでいた。
一度家に戻り、30分昼寝をし、1時間練習。家にいる間に霙が降った。
その後、晴れ渡った。
晴れ、雨、晴れ、霙、晴れ…。ロンドンでロンド形式、と独りで駄洒落を思った。
6時からはパスカル先生の”トライアウト&テクニカルクラス”。今日は、2人が弾いた後、ウォームアップのための楽譜を10枚ほどもらう。ホロヴィッツのエチュード、ブラームス練習曲からの抜粋、指の独立を図るものなどなど…。
その後急遽、同じ門下の子との合わせが入り、8時まで。ベートーヴェン協奏曲2番1楽章。明日レッスンがあるらしいので、明日ちゃんとさらおう。
帰って、オムライスを作って食べる。おいしかった。
最近、日本語がおかしい。巻き寿司を作る「巻きす」を「すのこ」と言ったり、運転を代わりにする人を、「代行」が思い浮かばずに、「替え玉」と口走ったりしている。友達の話では、「ひざ」が思い出せずに、「腕についてるのはひじでしょ、足のは何だっけ」と言っている人がいたらしい(笑)
誰かのノックの音で、9時起床。フラットメイトに聞いたけれど、誰も叩いてない、とのこと。
朝から雨が強い。
午前中は、また絵を描いた。
「何でこうなるんだ」と思いながら下書きを描いて、バランスが崩れているのを知っているのにそのまま直せるはずもなく、描き込みを始めて、「あ、やっぱり」となる。イライラする(笑)
お昼頃から急に晴れた。炒飯を作って食べて、午後からは譜読み。伴奏の曲がたまっているので、今日はすべてソロ以外の曲に集中することにした。ウォームアップを1時間半、その後、モーツァルトのVn協奏曲5番1楽章から。この曲はもう4度目になるけれど、ようやく最初のAdagioが、3度&テンポ共に慣れた。そう言えば、版によっては、右手の3度ではなくて両手で2ラインになっているものもあったけれど、バスが無くなるので良くない。また、Allegroから、左手がトレモロではなくて、ラミドミ、ララミラのようにアルベルティ・バス(Alberti Bass)になっているものも発見。これもストリングの刻みに聞こえないので良くない。この曲はとても好きだ。初めて楽譜をもらった時は、ただ冒頭の3度が嫌なだけだったのに。
続いてシベリウスのVn協奏曲二短調1楽章。フラットメイトと、「この曲は、音楽から温度を感じる、冷気が漂う」と話していた。
あと、ベートーヴェンVnソナタ5番の、今日は1&4楽章。この曲を読んでいて思うのは、「知っているべきじゃない」ということ。あまりに有名なフレーズ。「春」と聞いて思い浮かぶ2つのうちの一つ(もう一つは、ヴィヴァルディ)。何て邪魔なんだろう、と思ってしまった。耳慣れているが故に頭に入らない。これは、何とかしようと思っている課題の一つ。「rf」が書いてあったので、意識してつけてみたら全然違う音楽になったりしたので、一度すべてを頭の中から追い払わなくてはと思っている。関係ないけど、日系食品店で、お正月にベートーヴェンの春の後、ヴィヴァルディの春が流れていた。何かのサントラ?
そして、フランクのVnソナタ。2年前、これこそが、「知っている」ことで甘く見た最初の曲だった。
2年前、韓国人のチェリストに「フランクのソナタ全楽章を伴奏してくれ」と頼まれた。知らなかったので出だしを聞いたら、知っていた。「ああ、『フラーンクーのソーナター、チェーロでーもフルートでーもなーんでーも…』か、いいよ♪」と。その出だしが1楽章であること、2楽章すべてがデビルゾーン化していること、4楽章が意外に飛んで難しいことなど全てを「知らず」にOKしたのだった。ともあれ本番はちゃんと終わったので良かったけれど、替え歌を信じるのはそれ以来、やめた。
といういわくつきの曲だけれど、今回は本望のヴァイオリン!なので、張り切って頑張っている。やっぱり2楽章はいつまでたってもデビルエリアだ。
明日は土曜。土日は音が出せないので、ヘッドフォンで練習する。サイレントピアノ。
通称「機織り(はたおり)」。鍵盤のポコポコ沈む音が、機織りに聞こえるらしい。恩返しする人、たくさんいるなぁ…。
アカデミーで、練習。2時頃、Marylebone laneにあるStainway shopへ向かう。週一回のレッスンのため。先生は去年に引き続きPascal Nemirovski氏。
ショパンのエチュードOp.10-4とベートーヴェンのソナタOp.10-2(6番)を持っていったのだけれど、見てもらったのはエチュードのみ。1時間って短いな。
最近、シューマンのトッカータOp.7で指の強化を図っているけれど、多少、影響が出ているような気がしないでもないかもしれない(どっちだ)。指を早く動かすだけでなく、上を向いた、上方向にはじけるような音質は難しいと思う(どんなppもffにも当てはまると思う)。テンポで弾けても、音が発音できていないということは私の場合、多い。聴いていないから、とも言える。練習の質にもよる。
ということで、今日は”どうやって発音するか”のレッスンだった。どうやって打鍵のスピードを速めるか、発音できていない音とはどんな音なのか、など。楽しかった。
余談だけれど、このエチュードの最後が好きだ。左手は、ドラムで、スネア&フロアとバス(C#)でタッタンタッタン…とやっている感じ。右手はエレキの早弾き(笑)パスカルに言ったら怒られるかもしれない。(そう言えばドラムを最後に触ったのはいつだろう。
25歳で指が強くなるのか、という疑問は無視している。思った時にしか、行動はできないし。
それと、コンチェルトの曲も相談。グリーグとサンサーンス2番、平行になりそう(なれるのか)。
発音つながりだが、パスカルに、「London」の発音を注意された。「ロンドン」ではなくて、どちらかと言うと「ロンドゥン」。英語は不慣れなもので…。
レッスンが終わって外に出ると、小雨だった。寒い。
Oxford street 付近にあるアートショップ”Cass Art”に直行。木炭を買う。その後、Piccadilly circus(3年目にして、綴りがわからなかった)にあるJapan Centreで、醤油、マヨネーズ、豆腐、片栗粉、パン粉を買う。大根はいつも、横目で見ている。1本1.70ポンド(270円以上)…。
疲れて帰宅。